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会社設立 最終更新 2026年9月16日

現物出資で会社設立|車・パソコンを資本金にする方法と500万円ルール

 

手元の現金は少ないが、事業で使う道具はすでに持っている

会社をつくるときに悩みやすいのが資本金です。少なすぎると取引先や金融機関からの見え方が心配になり、かといって預金をすべて資本金に入れてしまうと、設立直後の運転資金が細くなります。

ここで使えるのが「現物出資」です。個人事業で使っていた車、パソコン、工具、厨房機器などをそのまま出資して、資本金に振り替えることができます。現金を減らさずに資本金の額を厚くできるため、個人事業から法人へ切り替える方(法人成り)と特に相性がよい方法です。

個人事業で使ってきた営業車やパソコンをそのまま会社に移したい、という発想は自然なものです。ところがこの方法は手続きと税金の両面に落とし穴があり、知らずに進めると設立後に思わぬ負担が出ることがあります。

 

現物出資とは|現金以外の財産を資本金にすること

現金以外の財産を出資して、その財産の価額に見合う株式の割当てを受けることを現物出資といいます。出した財産は会社のものになり、その価額がそのまま資本金(または資本準備金)に組み入れられます。

出資できるもの・できないもの

対象になるのは、貸借対照表に資産として計上できる財産です。具体的には次のようなものが該当します。

  • 自動車、パソコン、複合機、工具、厨房機器、什器などの動産
  • 土地、建物などの不動産
  • 有価証券
  • 特許権、商標権などの知的財産権
  • 売掛金などの債権

一方で、これから提供する労務やノウハウ、社長個人の信用といったものは出せません。「働くことで貢献する」という形は資本金にできない、と理解しておいてください。

出せるのは発起人だけ

会社設立の段階でこの方法を使えるのは発起人に限られます。発起人ではない人から財産を受け取りたい場合は、設立後に会社が買い取るか、通常の売買として処理する形になります。

 

検査役の調査が要らない「500万円以下」のルール

現物出資は定款に記載する必要があり、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受けなければなりません。ただし調査には時間も費用もかかるため、実務ではほとんど使われていません。理由は、次のいずれかに当てはまれば調査が不要になるからです(法務局「現物出資について」)。

  1. 定款に記載した価額(財産引受を含む)の合計が500万円以下であること
  2. 市場価格のある有価証券で、定款に記載した価額がその市場価格以下であること
  3. 価額が相当であることについて、弁護士・税理士・公認会計士・不動産鑑定士などの証明を受けていること(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

中小企業の設立で使われるのは、ほぼ1つ目の500万円以下のルールです。車1台とパソコン数台、工具一式といった規模であれば、まず500万円に収まります。

不動産を入れるときは合算で判定する

注意したいのは、500万円が財産ごとではなく合計額で判定される点です。不動産以外の財産と不動産を同時に出す場合、それぞれが500万円以下でも、合計が500万円を超えれば検査役の調査が必要になります。不動産を含めるつもりなら、この時点で専門家に相談しておくことをおすすめします。

なお、これらは会社設立時のルールです。設立後の増資で同じことをする場合は要件が異なりますので、同じ感覚で進めないようにしてください。

 

手続きの流れと必要書類

通常の設立手続きに、次の作業が加わります。

  1. 定款に記載する:出資する人の氏名、財産の内容(車なら車種・年式・車台番号など特定できる情報)、価額、割り当てる株式数を記載します。記載を漏らすと出資そのものが無効になります
  2. 調査報告書を作成する:設立時取締役が、定款に記載した価額が相当であることを調査し、報告書にまとめます
  3. 財産引継書を作成する:出資者から会社へ財産を引き渡したことを記録します
  4. 名義変更を行う:車であれば運輸支局での移転登録、不動産であれば所有権移転登記が必要です。名義を個人のままにしておくと、後で税務調査や融資審査で問題になります

登記申請では、現金出資分の払込証明書に加えて、上記の調査報告書と財産引継書を添付します。現金だけで設立する場合の払込手続きについては、通帳のないネット銀行でも会社設立できる|資本金の払込証明の注意点で解説しています。

価額はどう決めるか

定款に書く価額は、出資する時点の時価で決めます。実務では次のような資料を根拠として残します。

  • 車:中古車買取業者の査定書、業界の中古車相場資料
  • パソコン・機器:購入時の領収書と、購入からの経過年数に応じて減価させた金額
  • 不動産:固定資産税評価額、路線価、不動産鑑定評価

高く見積もりすぎると、実際の価額が定款記載額に著しく不足したときに、発起人と設立時取締役が不足額を支払う義務を負います。逆に低くしすぎると、資本金を厚くするという当初の目的が果たせません。根拠のある金額を、控えめに設定するのが安全です。

 

見落とされやすい税金の話

ここで生まれやすい誤解が「自分の物を会社に入れるだけだから税金は関係ない」というものです。実際には次の3つを確認する必要があります。

個人側に譲渡所得が出ることがある

税務上、法人への現物出資は「譲渡」に当たります。譲渡とは、有償無償を問わず資産を移転させる一切の行為をいい、法人に対する出資も含まれます(国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法)。

このとき、譲渡による収入金額は、出した財産の時価ではなく、取得した株式の時価で計算します(国税庁 No.3117 不動産を法人に現物出資したとき)。中古の車やパソコンであれば帳簿価額を下回ることが多く譲渡益は出にくいのですが、値上がりした不動産や有価証券を出す場合は、個人の確定申告で所得税・住民税がかかる可能性があります。なお、減価償却が進んで簿価が下がりきっている資産を時価で出資する場合は、中古の備品でも譲渡益が出ることがあります。

消費税の課税売上になることがある

消費税でも資産の譲渡として扱われます(国税庁 No.6145 資産の譲渡の具体例)。出資する個人がすでに課税事業者である場合、その金額が課税売上に含まれ、消費税の納税額が増えることがあります。免税事業者であれば影響はありませんが、インボイス登録をしている個人事業主が法人成りする場合は必ず確認してください。

資本金が1,000万円以上になると初年度から消費税がかかる

資本金を積み増した結果、資本金が1,000万円以上になると、設立1期目から消費税の課税事業者になります(国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)。見栄えを優先して1,000万円台にしたために、免税期間を丸ごと失うのは避けたいところです。

また、株式会社の設立登記にかかる登録免許税は資本金の額の1,000分の7で、これが15万円に満たないときは15万円です。合同会社は同じ計算で最低6万円となります(国税庁 No.7191 登録免許税の税額表)。資本金を大きくすると登録免許税も増える点は、合同会社は設立費用6万円で作れる|株式会社との費用差とあわせて確認してください。

会社に移した資産は、固定資産台帳に載せて減価償却していくことになります。個人事業で使っていた期間を引き継ぐのか、新たに耐用年数を設定するのかで毎年の経費が変わるため、設立後の記帳体制もあわせて整えておくと安心です。日々の記帳や固定資産の管理を外に出したい場合は、税理士法人GrowUpの経理代行サービスもご利用いただけます。

 

まとめ

現物出資は、手元の現金を減らさずに資本金を厚くできる方法です。定款への記載と調査報告書・財産引継書の作成、名義変更という手間はかかりますが、合計500万円以下であれば検査役の調査は不要で、中小企業の設立では十分に使える選択肢です。

一方で、個人側の譲渡所得、消費税の課税売上、資本金1,000万円のライン、登録免許税という4つの税務上の論点があり、ここを詰めずに進めると設立後に負担が出ます。個人事業からの法人成りを考えている方は、個人事業主から法人化するタイミングとあわせて、どの資産をいくらで会社に移すかを設計してから登記に進んでください。

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