2026年度「滋賀県未来投資総合補助金」で設備投資・新事業展開の費用を抑える方法

「設備投資や新事業展開は経営にとって重要な投資。ただし、費用負担は重い」
滋賀県の企業が持続的な成長を目指すとき、古くなった機械の更新やDXへの取り組み、新商品の開発など、先行投資が避けられません。ただし、多くの中小企業にとって、こうした投資の初期費用は経営を圧迫する大きな課題です。
そこで注目すべきが、滋賀県が2026年度に実施する「滋賀県未来投資総合補助金(第3弾)」です。この補助金は、生産性向上や新事業展開、人材育成に取り組む県内企業に対し、補助上限額は従業員数に応じて最大500万円、補助率は最大2/3(2/3は従業員1〜5名の区分で、上限は50万円)という手厚いサポートを行っています。
本記事では、この補助金の具体的な内容、対象要件、そして申請にあたって注意すべき点を、税理士の視点からまとめました。「うちの会社でも使える可能性があるのか」を判断する材料になれば幸いです。
滋賀県未来投資総合補助金とは何か
補助金の目的
滋賀県未来投資総合補助金は、長引く物価高騰の影響を受けている県内中小企業に対し、持続的な賃上げの実現につなげることを目指した制度です。単なる設備投資の支援ではなく、「投資を通して従業員の給与を上げられる企業」を対象としている点が特徴です。
設備投資や新事業展開によって生産性が向上し、その成果が従業員の賃上げにつながる、という政策の意図が反映されています。
対象となる3つの事業カテゴリ
補助対象となる事業は、以下の3つに大きく分類されます。
(1)生産性向上高効率設備への更新、DXによる業務効率化、IoT・ロボット導入などが対象です。既存の機械が老朽化しているなら、この枠での申請が有力になります。
(2)新事業展開新商品・新サービスの開発、事業転換、市場開拓への投資が該当します。既存事業とは異なる新しい分野への進出を考えている企業向けです。
(3)人材育成リスキリング(職業訓練)や新スキル習得の支援、人材採用・育成に関わる費用が対象になります。
補助額と補助率:従業員数がカギを握る
滋賀県未来投資総合補助金の強みは、従業員数に応じた手厚い補助です。ただし、ここでいう「従業員」は、「常時使用する従業員」に限定されていることに注意が必要です。パート・アルバイトであっても、2か月を超えて雇用されている方は含まれるのが一般的です。人数によって補助上限額と補助率が変わるため、数え方は事務局にご確認ください。
補助額の3つの区分
従業員1~5名の場合
- 補助上限額:50万円
- 補助率:2/3以内
- つまり、75万円の投資であれば、最大50万円(75万円×2/3)が補助対象
従業員6~20名の場合
- 補助上限額:200万円
- 補助率:1/2以内
- 400万円の投資であれば、最大200万円が補助
従業員21名以上の場合
- 補助上限額:500万円
- 補助率:1/2以内
- 1,000万円の投資であれば、最大500万円が補助
いずれの区分でも、下限額は15万円に設定されています。つまり、計算した補助金額が15万円に満たない規模の投資では、補助の対象になりません。
実例で見る補助額
具体的なケースで考えてみましょう。
ケース1:従業員5名の製造業新しい自動化機械を導入する予定で、総費用が120万円。この場合、120万円×2/3で最大80万円が補助対象に思えますが、補助上限額が50万円のため、実際の補助は50万円になります。
ケース2:従業員15名のサービス業DXシステムの導入で総費用250万円。250万円×1/2で125万円が補助対象になります。
このように、同じ投資額でも従業員数によって補助額が大きく変わります。
絶対に見落とせない要件:「3.5%の賃上げ」
滋賀県未来投資総合補助金では、補助対象となるための重要な条件として、賃上げ要件が設定されています。これは他の補助金にはない、特徴的な要件です。
賃上げ要件の具体的内容
対象となるには、「常時使用する従業員の平均賃金を、令和7年12月支給賃金と比べて、令和8年1月1日から補助事業完了までに、3.5%以上増加させること」が求められます。
言い換えると:
- 基準となるのは2025年12月の給与平均
- 2026年1月から事業完了までの間に、その平均を3.5%以上引き上げる必要がある
- 1名の高い給与ではなく、常時使用従業員全体の平均
賃上げ率の計算例
月給20万円の従業員3名、月給25万円の従業員2名(計5名)の企業を想定します。
2025年12月の平均給与:(20万円×3+25万円×2)÷5 = 22万円
3.5%の賃上げに必要な額:22万円×3.5% = 0.77万円つまり、平均給与を22万円から22.77万円程度に引き上げる必要があります。
企業にとって何を意味するか
この賃上げ要件は、「設備投資による生産性向上の成果を、従業員の給与アップに還元すること」を意味しています。補助金を単に設備購入に充てるだけでなく、その後の経営改善で得られた利益の一部を、スタッフの待遇改善に充てるという企業体質の改善が求められているわけです。
2026年度の募集スケジュール:一次募集は3月31日まで
滋賀県未来投資総合補助金の第3弾は、複数回に分けて募集が実施されます。
一次募集:2026年3月2日(月)~3月31日(火)
二次募集:2026年6月8日(月)~7月17日(金)
2026年度は、一次募集・二次募集ともにすでに受付を終了しています。次回以降の募集を検討している企業は、早めに申請準備を進めておく必要があります。特に、補助金の申請には事業計画書や収支予算書などの書類作成に時間がかかるため、2週間程度の準備期間を見積もっておくと安心です。
重要: 二次募集(2026年7月17日締切)も受付を終了しているため、これから申請する場合は次回以降の募集を待つことになります。募集回によって事業完了期限などの条件が変わる可能性があるため、事務局で確認しましょう。
対象となる企業:4つの要件を全て満たす必要がある
補助金の対象になるためには、補助金額や対象事業だけでなく、企業自体の要件も定められています。
対象企業の4つの基本要件
(1)滋賀県内に事務所または事業所がある県外の企業でも滋賀県内に実際の拠点があれば対象になります。遠隔地に営業所がある場合も要件を満たします。
(2)県内で補助事業を実施する補助対象となる設備投資や新事業展開が、滋賀県内で行われることが条件です。県外での事業は対象外になります。
(3)常時使用する従業員を1名以上雇用している個人事業主のみの企業は対象外です。法人であっても、正社員もしくは常時雇用のスタッフがいることが前提です。
(4)賃上げ要件を満たす先ほど説明した、3.5%以上の賃上げを実現する見込みがあること。
これらの要件を全て満たしていることが、申請の前提条件になります。
申請に必要な書類と準備のポイント
実際に申請する際、どのような書類が必要になるか、そして準備段階でのポイントをまとめました。
通常必要になる書類
申請時には、以下のような書類が必要になります(詳細は事務局に確認してください)。
- 申請書
- 事業計画書(補助対象事業の概要、投資内容、期待される効果)
- 収支予算書(設備・材料費など詳細な内訳)
- 企業概要書(従業員数、売上実績、現在の経営状況)
- 常時雇用従業員の給与台帳(過去3~6ヶ月)
- 賃上げ見通し表(3.5%の賃上げがどのように実現されるか)
準備段階での重要なポイント
事業計画書は「生産性向上→給与アップ」のストーリーが重要
申請書類の中でも、特に事業計画書は厳しく審査されます。「新しい機械を導入する」というだけでなく、「導入によって生産能力が何%上がり、それによって売上がいくら増えて、その利益の一部がスタッフの給与に反映される」という、一連のロジックが成り立っているかが判断されます。
給与台帳は過去3~6ヶ月分を揃えておく
賃上げ実績の判定では、補助事業完了時点で過去の給与台帳が証拠になります。必要書類に挙げたとおり、申請時には過去3~6ヶ月分の給与台帳が必要です。正確な月数は事務局に確認したうえで、早めに揃えておきましょう。
会社設立直後の企業への注意
新設法人で従業員を初めて雇用する場合、「3.5%の賃上げ」の要件をどう満たすかが問題になります。参考となる過去の給与実績がないため、初年度見込み給与と比較する形になることが多いです。設立後の雇用契約書や給与予定表で、賃上げの見込みを示す準備が必要です。
補助金を活用したときの資金計画の立て方
補助金を受け取る際、注意すべき資金繰りのポイントをまとめました。
補助金は「後払い」であることを理解する
補助金は、設備投資を行った「後に」、実績報告をして初めて受け取れます。つまり、最初は企業が全額を負担し、後から補助金が振り込まれるという流れになります。
従業員5名の企業が50万円の補助を受ける場合、もし総投資額が75万円なら、最初に75万円を用意しておく必要があります。
融資とのセット活用を検討する
設備投資の資金が逼迫している場合、補助金の決定を待つのではなく、日本政策金融公庫などからの融資と組み合わせる方法があります。
融資で前払い資金を確保し、補助金が下りたら融資を返済するという方法です。この場合、融資の利息が一時的に発生しますが、早期に投資を実行できるメリットが得られます。
会社設立後の補助金申請時における注意
新しく設立した企業が設備投資と補助金申請を同時進行する場合、以下の順序を整理することが重要です。
- 会社設立→登記完了
- 銀行口座開設
- 融資申し込み(必要な場合)
- 補助金申請
- 設備購入・施工
- 実績報告→補助金交付
これらの手順を無視して進めると、補助対象外になるリスクがあります。【会社設立後すぐにやるべき税務・経理の準備リスト10選】で詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 個人事業主は対象になりませんか?
A. 常時使用する従業員がいない、事業主お一人だけの場合は対象外です。この補助金は「常時使用する従業員」の給与が増加することを前提としているためです。個人事業主であっても、常時使用する従業員を1名以上雇用していれば、対象企業の4つの要件を満たす限り申請できます。なお、法人に変更する際の補助制度としては、別の選択肢がある可能性があります。詳しくは【滋賀県で会社設立するなら創業補助金も同時に申請を】をご参照ください。
Q2. すでに設備投資を完了している場合、申請できますか?
A. 基本的には、申請前に投資が完了している場合は対象外です。この補助金は、補助事業期間内に投資を実行する企業を支援するものです。ただし、事務局によっては個別判断する場合もあるため、事前に相談されることをお勧めします。
Q3. 賃上げが3.5%に満たなかった場合、補助金は返納しなければなりませんか?
A. 補助事業完了後、実績報告時に賃上げが確認されます。要件を満たさない場合、返納が必要になるケースが多いです。申請時点で実現可能な計画を立てることが重要です。
Q4. 複数年にまたがる設備投資の場合、どう対応しますか?
A. 補助事業の実施期間は、申請書に記載した期間内での完了が原則です。複数年計画の場合、各年度ごとに申請する必要があります。年間スケジュールの確認は事務局へお問い合わせください。
税理士からのアドバイス:申請前に経営体質を確認する
補助金申請にあたって、税理士として最も大切だと考えることが一つあります。それは、「補助金ありきの設備投資にしない」ということです。
補助金が受け取れることを前提に設備投資を決定してしまうと、万が一補助金が不採択だった場合、投資資金の返済が経営を圧迫する可能性があります。また、補助金を受けるための「3.5%の賃上げ」が、実現可能な経営数値に基づいているかも重要です。
申請前に以下の3点を確認することをお勧めします。
- 補助金なしでも経営が成り立つか → 融資でカバーできるか
- 投資による生産性向上の見込みが現実的か → 過去の経営実績から判断
- 3.5%の賃上げが実現可能か → 見込み売上から差し引いた利益で可能か
税理士法人GrowUpでは、補助金の活用を検討されている場合、ご相談いただければ数字の面から一緒に内容を確認しています(事業計画づくりの伴走支援は、別料金の「GrowUp成長経営伴走プログラム」として承っています)。「申請可能かどうか相談したい」という段階からご連絡ください。
まとめ:滋賀県未来投資総合補助金の活用で費用を抑える
滋賀県未来投資総合補助金は、中小企業の設備投資・新事業展開を支援する、手厚い制度です。2026年度の募集はいずれも受付を終了していますが、次回以降の募集を見据えて、検討している企業は早めの相談と準備が重要です。
補助率が最大2/3、補助上限額が従業員数に応じて最大500万円というのは、他の補助制度と比較しても非常に有利な条件です。ただし、「3.5%の賃上げ」という要件が現実的に達成可能かどうかが、申請判断のカギになります。
設備投資による生産性向上と従業員還元が、滋賀県の経済成長に必要だという政策思想が、この補助金に反映されています。その意図に沿った、実現可能な事業計画を立てることが、補助金採択への近道です。
税理士法人GrowUpでは、補助金の活用をご相談いただければ、数字の面から一緒に内容を確認しています。滋賀県内で設備投資や新事業展開をお考えでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
