自動車保険の個人から法人引継ぎについて
個人から法人成りし、個人事業で使っていた車を法人に引き継いだときは、自動車保険の契約も法人に引き継ぎましょう。
今回は自動車保険の契約を個人から法人に引き継ぐ場合の基本的な考え方について解説します。
目次
そもそも自動車保険の契約を法人に変更できる?
自動車保険の契約を、個人から法人に変更することは可能です。
ただしネット保険などでは法人契約の手続きを扱っていない場合があるため、代理店などで手続きを行うことが一般的になります。
法人向けの自動車保険では、原則、車の名義が法人であることが前提条件です。
補償内容は見直しを
個人の自動車保険は、自動車の使用目的の区分(業務用、通勤・通学使用、日常・レジャー用)で保険料が分かれていますが、法人の自動車保険にこの区分はありません。
法人の場合は、従業員の事故や運搬中の物品を補償する特約など、法人ならではのものがありますので、業態によって選択する必要があります。
記名被保険者(=被保険者)を法人としている場合でプライベートでも車を使用する場合は、「指定運転者特約」を検討しましょう。
法人の代表者を「指定運転者」とすることで、本人と家族の一定の事故を補償することができます。
等級を引き継げる場合もある
ノンフリート契約(9台以下の自動車保険契約)には、等級制度があります。
6等級スタートで、事故がなければ毎年1等級ずつ上がり、保険料が少しずつ安くなります。(最高は20等級)
それまで、せっかく上げてきた等級がまた6等級に戻るのは嫌ですよね。
残念ながら原則は、自動車保険の契約を変更すると等級は引き継がれません。
しかし、個人事業主が法人成りによって契約を変更をする場合には、事業内容が同一であることなどの要件を満たすことによって例外的に等級の引き継ぎができる場合があります。
法人成りで等級を引き継ぎたい場合は、保険会社に相談してみましょう。
自動車保険の法人引き継ぎの税務上の注意点
自動車保険料を個人で支払っても、生命保険や地震保険のような控除はありません。
これに対し、法人で契約して支払った自動車保険料は全額経費となります。
しかし、車や保険を法人に引き継ぐときには税務上の注意点があります。
主なものは
・車の時価
・給与課税
です。
車の時価に注意する
法人成りで個人の車を法人の資産とするときは、現物出資よりも、車を法人に「時価」で譲渡する処理を行うことが一般的です。
このとき時価より低い価額で譲渡すると、個人にみなし譲渡所得課税、法人に受贈益の課税が生じる場合があるので注意が必要です。
給与課税に注意 する
「保険契約を法人名義にすると経費になる」というと、何だか経費にならないものを経費にする裏技のように見えるかも知れませんが、リスクもあります。
法人には、個人事業主の「家事按分」の概念はありませんが、その代わりに「給与課税」があります。
「給与課税」とは、会社から役員や従業員に対して経済的な利益が与えられた場合、それを個人の「給与」として扱うというルールです。(所得税法第28条、第36条)
過去に、役員の妻が会社名義の車を専属利用したことで、会社から役員(の妻)に車の無償の貸与があったとして、車両の利用により受けた経済的な利益を役員給与と認めた事例があります。
このとき、会社が負担した自動車保険料なども経済的な利益に含められています。
(参考)国税不服審判所(平成24年11月1日裁決)
「判断」の「(3)争点ハ」の部分
心配な点があれば、税理士にご相談ください。