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2025年 11月 01日 会社設立起業・開業

資金繰り表の作成方法と経営改善への活かし方

「帳簿上は利益が出ているはずなのに、なぜか手元の現金が足りない…」 会社を設立し、事業を運営する経営者にとって、このような悩みは尽きません。いわゆる「黒字倒産」という言葉があるように、会社は利益が出ていても、支払いに必要なお金(現金)が手元になければ存続できないのです。 そこで重要になるのが、会社の血液ともいえる「お金の流れ」を管理することです。そのための強力なツールが「資金繰り表」です。 この記事では、なぜ資金繰り表が必要なのか、そして具体的な作成方法と経営改善への活かし方を解説します。

資金繰り表とは「手許現金の増減を把握する表」

資金繰り表とは、一定期間(通常は1ヶ月単位)の現金の収入と支出を項目ごとにまとめ、手元の現金がどのように増減したのかを把握するための表です。

資金繰り表には、過去のお金の流れを記録した『資金繰り実績表』と、これからのお金の流れを予測する『資金繰り予定表』の2種類があります。

実績表で過去の傾向を分析し、それを基に精度の高い予定表を作成すること、会社設立時にはどのくらいの費用がかかりそうなのか1つずつ予測し表を作成していくことが、経営の第一歩です。

損益計算書が「儲かっているか(利益)」を見るのに対し、資金繰り表は「お金が回っているか(現金)」を見るという大きな違いがあります。

商品を掛けで販売した場合、売上は計上されても、実際に入金されるのは数ヶ月後です。このタイムラグを把握し、資金ショート(支払いができなくなる状態)を防ぐために、資金繰り表は不可欠なのです。

資金繰り表を作成する3つのメリット

資金繰り表を作成するメリットは3つあります。

資金ショートを事前に防げる

数ヶ月先の現金の動きを予測できるため、「いつ、いくら資金が不足しそうか」を早期に把握し、対策を打つことができます。

経営判断の材料になる

「いつなら設備投資できるか」「賞与はいくら払えるか」といった、資金的な裏付けのある経営判断が可能になります。

金融機関からの信頼度が上がる

融資を申し込む際、資金繰り表を提出することで、自社の財務状況をしっかり管理していることをアピールでき、審査において有利に働くことがあります。

キャッシュフロー計算書との違い

よく似た書類に『キャッシュフロー計算書』がありますが、これは決算時に作成される会計書類で、過去の活動を『営業活動』『投資活動』『財務活動』の3つに分けて分析するものです。

一方、資金繰り表は未来のお金の動きを予測するために使われることが多く、より実務的で自由な形式で作成できる管理資料という違いがあります。

誰でもできる!資金繰り表の作り方

資金繰り表に決まった形式はありません。Excelなどで簡単に作成できます。まずは以下の基本的な項目で作成してみましょう。

主な構成項目

  1. 前月繰越:前月末時点での現預金の残高
  2. 収入(営業収入):現金売上、売掛金の回収など
  3. 支出(営業支出):現金仕入、買掛金の支払、人件費、家賃、その他経費など
  4. 財務収支: 金融機関からの借入金、借入金の返済など
  5. 翌月繰越:「(前月繰越+収入)-(支出±財務収支)」で計算した月末の現預金残高

資金繰り表のイメージは、以下のとおりです。

項目4月5月6月
Ⅰ.前月繰越10080120
Ⅱ.収入200250220
(現金売上)505050
(売掛金回収)150200170
Ⅲ.支出220210190
(仕入・外注費)807060
(人件費)606060
(家賃・光熱費)404040
(その他経費)404030
Ⅳ.財務収支000
(借入)000
(返済)000
Ⅴ.翌月繰越80120150

3つの作成のポイント

  1. 現金ベースで記入する:売上が発生した日ではなく、「実際に入金された日」の月に収入として記入します。支出も同様です。
  2. 予測は厳しめに見積もる:将来の予定表を作成する場合、売上は控えめに、経費は多めに見積もると、より安全な計画になります。
  3. 税金の支払いを忘れない: 法人税や消費税などの支払いは金額が大きくなるため、支払月をあらかじめ記入しておきましょう。

資金繰り表を経営改善に活かす方法

資金繰り表は、作成して終わりではありません。分析し、改善アクションにつなげることが最も重要です。特に、資金繰りが悪化していることに気付けた場合は、以下のポイントでの見直しが必要です。

資金繰りが悪化している場合

資金繰りが厳しい月の原因を探ってみましょう。

「売掛金の回収が遅れている」「在庫が増えすぎている」「固定費が高すぎる」など、問題点が見えてきます。

具体的な改善アクション4つ

  1. 売掛金の回収サイトを短縮できないか交渉する。
  2. 不要な在庫を減らし、仕入れのタイミングを見直す。
  3. 通信費や広告費など、削減できる経費がないか洗い出す。
  4. 資金ショートが避けられない場合は、早めに金融機関に融資の相談をする。

このように、資金繰り表を定期的にチェックすることで、問題の早期発見と対策が可能になります。会社のお金の流れを知るためにも、ぜひ資金繰り表の作成と活用を習慣づけてください。